フラワーガールの恋

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*** その二日後のことだった。 アナが朝、出勤の支度をしていると、「急で悪いけど、少し早めに出て来れる?」 とジョーからメッセージが入った。 秋の朝の冷たい空気は嫌いじゃないので、マフラーを巻いて自転車通勤にするつもりでいたが、急ぐなら車だろう。 まだ朝のすいた道を車を走らせると、Proseの裏手の駐車場に車を停めた。 スタッフルームから店内へ向かおうとすると、人の話し声が聞こえた。 あれ? 開店前なのに、誰か他にいるんだろうか。 アナは思わず聞き耳をたてた。 一人はジョーの声だった。そして、もう一人の、この声は。 、、、忘れようにも忘れられない声。 心臓が痛いくらいに脈が早くなる。 スタッフルームの出口のところで、足が動かなくなる。 店の中に入る勇気が、出ない。 「そこにいるの、アナ?」 ジョーの声がした。 「アナだろ?」 目をぎゅっとつぶって、一歩を踏み出す。 息を吐いて目線をあげると、レジ近くに立つ男性二人が、自分のほうを見ていた。 「、、、!」 「アナ、久しぶり」 あの時と同じだ。穏やかな笑顔。 、、、あんなに、酷いことを言ったのに。 「昨日、中国出張から戻ったばかりだそうだ。開店準備は俺がするから、ちょっと二人で話してきたら?」 ジョーがレジ周りの整理を始めながら、言った。 「でも、」 「アナ、」 ジョーが静かに、でもきっぱりとした声で言った。  「ここは俺に任せてくれていいから」 ふたりは、黙って店を出て歩き出した。 「あ、、、」 なんだか寒いと思ったら、雪。 アナは手のひらを差し出して、そのひとひらを受け止めた。 「どこへ行く?」 「そうね、、、」 お互いに何も言わずに、なぜか二人の足はあの公園へと向かっていた。
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