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「、、、った、の?」
アナは手をさしださずに、座ったまま何かをつぶやいたが、よく聞き取れないような小さな声だった。
「?」 いぶかしげな顔をするアレックス。
立ち上がった彼を見上げるアナの頬に、涙の筋がひとつついていた。
「はめたかった、の?」
「、、、、、、当たり前だよ」
観念したように、アレックスはつぶやいた。
そしてアナの手の中にある箱に視線を投げた。
「でもあんな大事な立場を捨ててまで、」
「アナ、」
アレックスはアナの言葉を最後まで待たずに、口を開いた。
「前にも言ったろ。仕事はいくらでも代わりがあるが、アナ・ファーガソンは世界にたった一人だけだ」
そう言うと、彼は再びベンチの上に腰を下ろした。
「ここで君に再会して、何度も二人で会って、、、。もう一度、君の心を取り戻せたような気がしたんだ」
アナの目からポロっとまた涙が一粒こぼれる。
「でも2度目もあれだけはっきりと断られたら、もう諦めるしかない、、、。そうだろ?」
「2度目じゃ、ない」
アナは持ってきたバッグから、持ち帰った手紙とメモを取り出した。
「これを初めて見たのは、先週だったの」
「、、、うん。そうだった。君のママに会ったときに聞いたんだ。、、、開封してなかったって」
「あのときは、あなたは仕事が面白くて、もう私のことなんてどうでもよくなりつつあるんじゃないかと、思ってた。辛くて、無理やり感情にふたをするために、連絡を絶ったの。そうじゃないと、自分がおかしくなりそうで」
「うん、、、。あのころ君の家の状況がどんなに大変だったか、それも君のママから聞いた。そばにいられなくて、力になってあげられなくて、本当にごめん」
アナは首を横に振りながら、言った。
「ううん、私こそ、、、。この前は、あんな酷いことを言って、ごめんなさい」
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