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抜けるような青空の下、6月のガーデンウェディングは、白い蘭をはじめ花をあちこちにあしらった、花に溢れたものになった。
「ほら走ると転ぶわよ! ドレス汚さないでねっ」
エリカが一番下のまだ5歳の女の子に声をかける。
あれからアレックスは予定通り2週間後には上海に旅立ったが、要人との会議と称して、何度かこちらに戻ってきた。
今の彼は必要なら自分で出張予定を作り出せるような、力ある立場なのだ。
アナは翌年の4月までProseで働き続け、後任の店長となるサムをびっしりしごいた。
向こうには英語の書物を集めた資料室があるので、アナは当面はそこを手伝う予定らしい。
「アナ、もしこっちに帰ってきたら、いつでも店長に戻してあげるよ」 ジョーが言う。
「ええっ、俺はどうなるんですか」 サムが笑いながら抗議した。
「君は副店長に降格?」
「ひでー」 と言いながらも、 「まあアナが戻ってきたとき納得してもらえるような店長になれるよう、がんばりますっ」
サムの言葉に、常連客の皆から 「がんばれー!」 と拍手や励ましが飛んできた。
5月になるとアナはいったん向こうに渡ったが、結婚式は二人が初めて出会った場所でやりたいと強く希望して、6月のよく晴れた日曜日、この思い出の場所での式になったのだ。
光に映えると少しピンクの色が混ざる、光沢のあるサテンの白いウェディングドレスに身を包んだアナが、タキシードを着たアレックスのそばでにこやかに微笑んでいる。
「あの二人って、高校の時のスィートハート(恋人同士)だったんだって?」
マリが目をまるくして、語る。
「初めて出会ったのはアナが4歳の時だってさ!」
ショーンもびっくり顔だ。
「へぇ、あのアナがねえ、、、」
「でもダンナさまの隣にいるアナ、とても幸せそうな笑顔してない?」
ルナは憧れの目線を隠すことなく言った。
「うん、店でのアナとはぜんぜん雰囲気違うよね。ふわふわ~って感じで。なんか調子狂う、、、」
マリが肩をすくめた。
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