302人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
***
「あ」
二人でガーデンを横切って歩く途中、アレックスが何かを拾った。
「蘭の花がひとつ落ちてる」
「あら」
「君のドレスにつけるところはないな」
「今回は汚してないもん」 すねた口調でアナが言う。
「ははは、、じゃ、はい、これ」
花を手渡そうとするアレックスに手を差し出したら、腕ごとぐぃっと引き寄せられた。
「んんっ」
慌てて唇を離し、彼を引き剥がしにかかる。
いくらなんでも、自分の部下たちが見ている前でこれは、、、
赤くなって抗議の目で彼を見つめるアナに、アレックスは、 「ごめん、可愛くてがまんできなかった」 と謝った。
なによ、ぜんぜん反省してないくせに。
アナはアレックスの耳元に唇を寄せると、 「続きは、あとでね」 と囁いた。
今度はアレックスが赤くなる番だった。
目を丸くしてアナを見つめたが、すぐに彼女の体をまたぐぃっと引き寄せ、今度はぎゅっと強く抱きしめた。
「花、花がつぶれる!」
アナが軽い悲鳴をあげた。
「あ、ごめん」
アレックスがひょい、と体を離す。
花は無事だった。
あぁー。もう。
二人で笑い出した。
(もう決して、見失わない)
アナは手渡された白い花を見つめて、もう一度隣にいるアレックスを、愛しげに見つめるのだった。
The End.
最初のコメントを投稿しよう!