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「はあ!? 彼氏ってなんやの、おもろいこと言うな、ボク!」
ハハハッと爆笑するルカに、樹の笑顔が固まった。
「……ガキ扱いすんなクソが……」
「え? 樹くん?」
スッと冷たい表情になった樹に、ヒナが心配そうに彼の顔を覗き込む。
「ヒナ、早くおばさんに言われてた書類、そこのオジサンに渡しなよ。で、さっさと遊び行こー」
早く早くと促す樹に、ヒナはあっと声を上げ、大切な書類があったんだと思いだす。
母から預かっていた書類を鞄から取り出したヒナは、ルカに「はい」と手渡した。
「おお、サンキュー。ってか、小僧、オジサンはヒドいわ! オレまだ若いねんで!」
なあ、ヒナ! と、ルカはヒナの肩に手をまわしながらわざとらしく嘆いてみせる。
瞬間、樹のまとう空気が氷点下まで一気に下がり、双眸に危うい光がカチリと宿る。
ヒナの肩に回ったルカの手を、樹は渾身の力でバシッとはたき落とした。
「……ヒナに汚い手で触らないでくれる? これ、ボクのだから」
ありありとした妬心を隠すこともなく、樹はルカを睥睨する。
コロリと態度を豹変させた樹に、ルカはきょとんとなる。そして、暑苦しいほど二パッと破顔した。
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