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「……ヒナ」
海を見つめたまま動かないヒナの視線を遮るように、樹はそっとヒナに口付けた。
ビクッとヒナの身体が揺れる。
ヒナの背で、徹の「おおっ」という歓声が聞こえて、視線だけ彼に向けた。
これはボクのモノだと主張するように。
「うわ、たまんねえなー、こりゃ」
徹は完敗だと手をヒラヒラさせながら、顔を逸らせてしまった。
それを見て、樹はほくそ笑む。
焦点を結んだヒナの目が大きく揺れ、彼女の身体がビクリと戦いた。
「……ッ!? ぅんッ、ふ、ふ、んぎゃ――――ッ!!」
スケッチブックと鉛筆を放り投げて、驚愕の表情で目の前の樹を見据えながら、ヒナは金きり声を上げた。
「ふんぎゃーって悲鳴、オレ初めて聞いたー」
徹はふたりを指さしながら、お腹を抱えてケタケタ笑いまくった。
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