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来た時同様、小型の高速船に乗り、港についてからも、ヒナの機嫌は地の底を這っていた。
スケッチをしていて、気が付いたら、何故か樹にキスされていた。
あまりの驚きに、目玉が飛び出るかとヒナは思った。
――――徹さんもいてたのに! あんな、あんな・・・キキキキス・・・するなんて!
真っ赤になりながら、ムムムッとヒナの眉間に深いシワが寄る。
「ヒナ」
気遣うような樹の声。
ヒナは無視して違う方を見る。
「……ヒナ」
焦れるような樹の声。
ヒナはちょっとビビったが、それでも頑張って無視を貫く。
「…………いい加減にしろよ、ヒナ」
怒髪天を突く一歩手前な、樹の声。
さすがにヒナは怖くなった。
ちろっと横目で樹を窺う。
「ムシすんなバカが」
イライラとした低い声が背中を突き刺す。
けれど、暴言と先ほどのキス的暴挙に、ヒナの沸点もかなり低くなっていた。
「ッ! 樹くんが悪いんだから! 徹さんがいてるのに、あ、あ、あんなキキキ、ス……とか、それに……バカとか……いつも言ってるし! ヒドいよッ!!」
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