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徹の冷たい言葉が針の雨のように胸を突き刺す。
何も言い返せないヒナは、黙り込んだまま俯いた。
「……ヒナッ」
傷ついたヒナの顔に、涙に、激しい怒りが樹に浮かぶ。
掴まれた腕を振り払い、加減なしで徹を蹴り上げた。
「ぐっ……」
腹を蹴られた徹は、身体を曲げて体勢を崩す。
「……よくもヒナを傷つけたな」
素早くヒナの元へと駆け寄った樹は、徹の目から隠すように、震える彼女の前に立つ。
そして、射殺すほどの双眸を徹に向けて言い放った。
「……殺してやる」
「あははっ、いっちゃん怖い怖いー。ねえーヒナちゃん。分相応、己を知るって、すっごく大事だとオレは思うんだよねー。いっちゃんの枷になってるって、自覚して? 別れること、ちゃあんと考えといてねー?」
「……徹ッ!!」
鋭い怒声が徹に向けられる。
ヒナを庇う樹を一瞥した徹は、フッと鼻で嗤って、
「……まだまだなんだよねー。まだ総兄には届かないなー。ガンバレ、いっちゃんッ」
あははっと乾いた笑みを浮かべながら、徹はその場を立ち去ろう踵を返す。
大通りを走るタクシーを止めようと上げた徹の手が、通りかかった長身の男にいきなり掴まれた。
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