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「え?」
徹が男を見上げた瞬間、ドスッという鈍い音と共に、彼の身体が勢いよく真横に吹っ飛ぶ。
「あっ」
徹は、腕を掴んだ見知らぬ黒衣の男に、いきなり蹴りつけられたのだ。
ヒナは、徹を蹴り飛ばした男を驚愕の眼差しで見つめた。
「……アンタ、ヒナ、バカにして、泣かせたな? 啓太さんの娘を、傷つけたな? ……許さん」
黒衣の男は徹の胸ぐらを掴み挙げ、横たわる彼を乱暴に引き摺り挙げる。
徹は見たことのない男に眉をひそめながら、自分を殴りつけた男を睨み付けた。
ヒナは目を瞬かせた。いきなりの暴挙に及んだ長身の男を、信じられないものを見るように凝視する。
そして、ヒナは小刻みに震える唇を、小さく開いた。
「……そんな、なんで…………ル、ルカちゃん!?」
男は、黒のサングラスを指先でずらしてヒナを見る。
「おう! まさか日本出てるとか思わんしなあ。社長に聞いて方々探したでえ、ヒナ」
徹に制裁を加えた黒衣の男・高梨瑠伽は、ニッと犬歯を覗かせながら、悪戯な笑みを浮かべた――――。
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