動き出す陰謀

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「ボクはヒナと行く」 「ダメ。樹くんは先にホテルに帰って待ってて。ね?」 「オレは? オレもあかんの? ヒナの護衛するで?」  樹との間に割って入ってきたルカにも、ヒナはダメだとはっきり断る。 「ヒナ、言ったよね? 海外は怖いんだって。ここだって例外じゃないんだよ。徹の言うことなんて聞く必要ない。ね? ヒナ」 「そうや。こんなんあかん。納得でけへん。な、ヒナ」 「お願い。私、ひとりでやってみたい。助けてもらってばかりじゃ意味がないんだ。大丈夫だから、ね?」  ヒナはふたりに懇願する。  せっかく徹が協力してくれると言ってくれたのに、試練という名のチャンスを与えてくれたのに、その気持ちを無下にしたくはなかった。  ヒナの言葉に、樹は愕然とした。 「……ヒナ。ダメだよ、それはダメだ」  不安に揺れる眸で、樹は必死でヒナを掻き口説く。  けれど、やはりヒナは樹の訴えを聞くことはなく、ただ、首を左右に揺らすだけ。 「樹くん。私ね、昔っからずっと、何も出来ないみそっかすだったでしょ? クラスメイトにいじめられたり、泣かされたり、いっぱい失敗したり。でもね」  そう言って嬉しそうに笑うヒナに、樹とルカは眉をひそめた。  ヒナが何故、今この場面で、そんな顔をするのか理解できなかったから。  ふたりの怪訝な様子に苦笑しながらも、ヒナは、自分がいちばん好きな、亡き父が残してくれたその言葉を。  そして、何より今のこの状況に最も相応しいであろう言葉を、ふたりに伝えた。 「やってみなきゃ、わからない。だよねっ」  ――――最初から出来ないと決めつけていてはダメ。何も進まないし、始まらない。何事もやってみないとわからない。失敗しても良いから、自分がこれで良いと思ったことをやってみてごらん、ヒナ。  父の言葉が蘇る。  大丈夫。そう言って、ヒナは満面の笑みを浮かべた。
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