動き出す陰謀

10/20
前へ
/189ページ
次へ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇  堤防沿いを電子辞書とガイドブックを片手に、ヒナは滴る汗を拭いながら歩く。 のどかな海沿いをてくてくと歩きながら、先ほどのことを思い返してゾッとする。  実は、大通りからここまでくる間に、樹の忠告通りヒヤリとする場面があったのだ。  大通りから少し離れた場所で、道案内を名乗り出る若い男達に囲まれてしまい、車に押し込められそうになった。けれど、通りがかりの親切な青年が現れて、ヒナを助けてくれたのだ。  難を逃れたヒナは、助けてくれた男性にここまで案内してもらい、先ほど別れたばかりだった。  目的地のホテルまでは、地図上で確認したらおよそ10キロほど先だった。ホテル名にちゃんと赤で印をつけてくれていたので、すぐに分かった。  それは、ヒナが迷子にならないように、徹がしてくれた心遣いだったのかもしれない。そう思うと、ヒナは嬉しくなった。歩く足に力がこもる。  今はお昼を過ぎたちょうど14時。  手にした紙袋から先ほど屋台で買った水とサンドイッチ取り出し、遅くなった昼食を簡単に済ませてしまうと、ヒナはゴールであるホテルに向かい、さらに足を進めた。  ホテルまでは、この大通りをずっと道なりに行けばいい。  途中2回ほど左折地点があったが、分からなかったら人に聞こうと思った。 「徹さんが秘密兵器を貸してくれたから、大丈夫」
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1393人が本棚に入れています
本棚に追加