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堤防沿いを電子辞書とガイドブックを片手に、ヒナは滴る汗を拭いながら歩く。
のどかな海沿いをてくてくと歩きながら、先ほどのことを思い返してゾッとする。
実は、大通りからここまでくる間に、樹の忠告通りヒヤリとする場面があったのだ。
大通りから少し離れた場所で、道案内を名乗り出る若い男達に囲まれてしまい、車に押し込められそうになった。けれど、通りがかりの親切な青年が現れて、ヒナを助けてくれたのだ。
難を逃れたヒナは、助けてくれた男性にここまで案内してもらい、先ほど別れたばかりだった。
目的地のホテルまでは、地図上で確認したらおよそ10キロほど先だった。ホテル名にちゃんと赤で印をつけてくれていたので、すぐに分かった。
それは、ヒナが迷子にならないように、徹がしてくれた心遣いだったのかもしれない。そう思うと、ヒナは嬉しくなった。歩く足に力がこもる。
今はお昼を過ぎたちょうど14時。
手にした紙袋から先ほど屋台で買った水とサンドイッチ取り出し、遅くなった昼食を簡単に済ませてしまうと、ヒナはゴールであるホテルに向かい、さらに足を進めた。
ホテルまでは、この大通りをずっと道なりに行けばいい。
途中2回ほど左折地点があったが、分からなかったら人に聞こうと思った。
「徹さんが秘密兵器を貸してくれたから、大丈夫」
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