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スマホに表示された時刻が17時を大幅に過ぎた頃、ヒナはホテルへと無事に辿り着いた。
ホテルの入り口には、眉間に皺を寄せた樹がイライラと足を揺らしながら立っている。
「樹くーんっ」
ヒナの声にハッと顔を上げた樹は、安堵にクシャリと顔を歪め、飛ぶようにして駆け寄ってきた。
「ヒナッ!」
「樹くん、ただいま! ひとりで帰って来れたよ!」
「凄いよ、ヒナ! ……でも、もうこんな提案、絶対飲んじゃダメだからね」
「心配掛けてごめんなさい。彼がね、迷子になってた私を助けてくれたの。ね、レニーくん」
樹はレニーと紹介された少年に視線を移す。
姿勢を正したレニーは、無言のまま樹に頭を下げた。そして、ヒナに「バイバイ」と手を振り、来た時同様、自転車に乗って去ってしまった。
「レニーくん、ありがとう!」
ヒナはレニーの姿が見えなくなるまで、手を振り彼を見送った。
その時、ヒナの背後から落胆の声が上がった。
「あれー。ヒナちゃん戻って来ちゃったの?」
残念。そう言いながら近付いてきたのは、徹だった。
「はい、無事に帰って来れました。途中、男の人に絡まれちゃったり、迷子になったりしましたけど、その度に日本語が話せる親切な人に助けてもらって。さっきも親切な現地の男の子に、このホテルまで送ってもらったんです」
もしかして送ってもらったらダメだったのかと、ヒナは不安げな顔になる。
すると徹は、あっと声を上げ、胡乱に煙る目を樹に投げた。
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