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「やっぱ夏の暑い日ぃは、これやなー」
樹は目の前に座る黒ずくめの男を見ないように、窓の外に視線を向けている。
樹の隣で、ヒナはきょとんとした顔でルカを凝視していた。
黒ずくめの男・ルカは、スプーンを手に、目の前の巨大なフルーツパフェをウキウキと頬張っていた。
「……ルカちゃん、それ全部ひとりで食べれるの?」
ルカの目の前にデンと鎮座する、3人分はあろうかという巨大パフェを指差して、ヒナは恐る恐る疑問を口にした。
「なんや、欲しいん? うまいで、ヒナも食べてみぃ」
そう言って、ルカは自分が使っていたスプーンをヒナに渡そうとする。
「はい」と渡されたそれに、思わずといったふうに手を差し出したヒナを見て、樹はギョッと目をむいた。
スプーンへと伸びるヒナの手を、樹はバシッと叩き落とす。
「ヒナ、なに考えてんの!? 同じスプーン使うとかありえない! 脊髄反射で行動するなバカが! ナニかがうつる。病気になるっ」
「ヒドッ! 樹ちゃん、自分ちょっと賢いからってヒドないですかー。しかもなんで小学生がコーヒーをブラックで飲むん!?」
「……『ちゃん』言うな。オッサンがパフェ山盛り食う姿のが不気味。見たくない」
視覚的に無理とばかりに眉根を寄せて、樹はまた窓の外へと視線を流す。
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