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「ルカちゃん、私の後つけてたの?」
「……すまん。心配で心配で、いても立ってもおられへんかった……」
ヒナが自転車に乗って去ってしまったので、徒歩で彼女の後をつけていたルカは、その場で足止めを喰らってしまっていたらしい。
「着いて来ちゃダメって言ったのに」
「…………うぅ、すまん」
「でも、心配してくれて、ありがとう」
ヒナは微苦笑を浮かべながら、ルカに礼を言った。ルカはホッと息を吐いて、
「ヒナ、途中で泣くんちゃうか思たけど……わからんことは人に聞いたり、街中で案内したるて近寄ってきた怪しげな男ら、ちゃんと断わったりも出来とったな。ヒナはすごいで、驚いた。さすが啓太さんの娘や」
感動して瞳を潤ませながら、我が子に対するようにヒナを褒めちぎった。
ヒナは恥ずかしくなって、視線が足元に落ちてしまう。
「当たり前じゃない。ヒナは疑うことを知らないだけで、応用力が皆無ってわけじゃないからね。ボクはヒナを信じてたから、ここで大人しく待ってたよ」
「ただ、大人しゅう待ってただけか。お前、ヒナのこと心配ちゃうんか」
「心配したよ。でも、ひとりで行くって決めたヒナの気持ちを無視して着いてくことが、果たして正解だったのかな? ヒナは自分の力で出来るって判断した。ボクはそれを信じて待ってた。それだけ」
――――もちろんヒナに危険が及ばないよう裏から手を回していたし、万一の時の保険として、お前も頭数に入れてたから。
樹はフフッとひそやかに嗤い、真実は胸の内に秘めておく。
樹の言葉に、ルカはグッと言葉を詰まらせた。
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