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樹の言う通り、ルカはヒナを信じていなかったのだろう。ヒナには無理だと勝手に決めつけ、彼女の意思を無視してついて行ってしまったのだから。
「ヒナ、信じてやれんでホンマにすまんかった……」
ルカは大きな身体を竦ませて、頭を垂れた。
「ううん。いいよ、ルカちゃん。だって、ルカちゃんにとって私は、きっとまだ小さい子供のまんまなんでしょ?」
ルカの中で、ヒナはまだ幼い頃まま、大人の手を取らねば満足に立つことすら出来ない、そんな印象が拭えなかったのかもしれない。
ヒナはそう思って苦笑した。
「アンタは知らないだけで、ヒナはちゃんとひとりで立つことが出来るよ。もちろん、ボク同様まだ完璧なんかじゃないけどね」
樹は、お前などより自分の方がヒナを知っているのだと匂わせながら、ルカを一瞥する。
「分かったふうな口聞くやん。……ガキのくせに」
「……ガキだと? 加齢臭漂うおっさんのくせに」
「なんやと!? まがいもんのくせに口だけは達者やな!」
「……まがいもの?」
樹の目がスッと細まる。その言葉は聞き捨てならないとばかりに、樹が纏う空気が一瞬で冷たいものへと変わる。
ルカはハッと鼻で嗤った。
「せや。本心見せへん嘘の仮面被って、お前はヒナを騙す。お前はまがいもんや。そんなまがいもんにヒナは渡されへん」
「……お前」
この一言がきっかけとなり、ルカと樹は言い合いを始めてしまった。
「ルカちゃん、言い過ぎだよ、違うよ、樹くんもやめて……っ」
ヒナはおろおろと止めに入ろうとした時、いつの間に移動したのか、ロビーに佇む徹に手招きされる。
ふたりを気にしながらも、ヒナは徹のもとへと近寄った。
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