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ヒナが消えた。
視線を落とし、樹は手にしたスマホを凝視していた。
地図上に表示された、赤い点。
これはヒナの現在地を示すものだった。
彼女の首に着けたチョーカーに内蔵されたGPSから送られてくる信号。
ヒナの居場所を示す赤い点の動きは、今、止まった。
示されたその場所を、樹は正確に頭へと叩き込む。
そして、視線をルカへとやり、彼に声を掛けた。
「高梨さん。ヒナはここにいる」
ハッとルカの目が樹を捉える。
「は!? なんでそんなん知って、」
「ここ。すぐに向かってくれる?」
ルカの言葉を遮り、樹は手にしたスマホを彼に渡した。
「GPS……こんなんヒナにつけてたんか、お前。……言いたいことは山ほどあるんやけどな。全部、後やな。わかった」
ルカは受け取ったスマホを手に、きびすを返した。
その後ろ姿に、樹は声を掛ける。
「もし、ボクが間に合わなかったら。その時はアンタが助けて。必ず」
振り返ったルカに、樹は薄く笑み、続けた。
「コートの裏側に隠してる『それ』。それがあれば、相手が複数でもなんとか出来るだろ?」
大人のような目をして、秘密を曝く言葉を口にした樹に、ルカは動きを止めた。
瞠目し、ルカは思わずコートの上からそれを押さえてしまう。そして、硬いその感触に苦い笑みを浮かべた。
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