1393人が本棚に入れています
本棚に追加
「答えろ」
「……知らないってば。なんでオレのせいにするのー? ヒドいよ、こんなにヒナちゃんのこと心配してんのにー」
へらへら笑いながら、徹は樹の目を見ようとしない。樹に見透かされるのを恐れてか、前のめりに屈みながら、視線は足元に落ちたまま。
「そうだね。心配、してたんだろうね。だから、渡さなくてもいい電子辞書なんて渡した。自力で何とか戻ってこれるように。ボクの助けがあるのを知りながら。違う?」
徹の動揺を見て、樹は核心を突いた。
「誰かを盾に取られたね?」
徹の目が大きく見開かれる。
驚愕に歪む眸。笑みを刻んでいた唇が戦慄く。
「大方、誰の指示かはわかってるんだけどね? 徹の口から言ってくれたら助かる」
――――服に忍ばせてあるボイスレコーダーに録音できるから。
そんな小細工、あえて言わなくても徹なら分かってるだろうが。
最初のコメントを投稿しよう!