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刹那、耳を劈くような銃声が、一斉に鳴り響いた。
扉を蹴破る音。
窓ガラスが割れる音。
乱暴に床を踏みしめる靴音。
銃声と共に、ヒナに手をかけようとしていた男がくずおれ、バタッと床に沈んでしまう。
「ヒナッ」
小柄な影が、ヒナの視界に飛び込んでくる。
「……いつき、く……?」
「ヒナッ!!」
銃口を男達へと向けたまま、樹はヒナの名を叫ぶ。
ヒナへと近づいた途端、男達は向けられた銃口から逃げるようにして入り口へと駆け出してゆく。
曝かれたヒナの白い肌は、朱に塗れていた。
樹はヒナの胸の傷を見て、驚愕と恐怖に顔を歪めた。
小刻みに震える樹の手が、怯えるようにしてヒナに触れる。
そして、流れ落ちる鮮血を止めるために、樹は傷口を強く押さえつけた。
ヒナが横たわっていた床には、赤黒い血だまりが出来ている。
「……この男に刺されたの?」
胸を撃たれ、呻く男の延髄めがけて、樹は手にした銃のグリップで容赦なく殴りつけた。
男の呻き声と動きがピタリと止まる。
爆発しそうな怒りを必死で押し殺す樹に、ヒナはぎこちない動きで首を振った。
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