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「……ヒナがいなくなったら、ボクは壊れてしまう」
酷く掠れた、静かな声。
けれどそれは、心の内をさらけ出す、慟哭の声だった。
「お願い。これから先、何があろうとも。もう二度と、自分を傷つけるようなことはしないで」
樹はヒナに言った。
切ないまでの懇願に、ヒナは初めて後悔した。
――――ごめんなさい。もう、二度とこんなことしない。だから泣かないで、樹くん。
言葉にならない声。止まない銃声。
壁の向こうから聞こえる、呻くような男達の声。
樹の手には拳銃があった。
今耳に聞こえている銃声は、樹ではない他の誰かが引き金を引いたもの。
ふいに扉を横切った黒い人影に、ヒナは目を見開く。
ルカだった。
黒い銃を握りしめ、ルカが身を隠しながら発砲する姿が見えた。
慣れた仕草で拳銃を握る、その姿にぞっとした。
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