狙われたヒナ

19/30
前へ
/189ページ
次へ
「ふうん? ボクのこと、仮面被ったまがい物って言ったけど。それ、自分に対しての言葉だったんだね。あんたこそ、画家の仮面を被ったまがいもの。ねえ、アンタ何者? 手際良すぎ。場慣れしすぎなんだよ」  壁に凭れながら、ルカは静かに樹の話を聞いている。  楽しげな笑みが彼の唇に刻まれていた。 「アンタがいつも着てる黒。それ、衣装っていうよりも、喪服のつもりなんじゃないの? 今まで何人殺してきた?」 「俺は殺しなんぞせえへん。殺しの専門は、さっきおった黒服の男達の方。俺の専門は別」  その答えに、樹はくくっと喉を震わせた。  殺しはしないが、それ以外のことはする。しかも、ルカの表情の動きから、彼は後ろ黒いところがあるようだった。  やはりこの男は使えそうだ。  そう樹は考える。 「で? 黒幕は誰や」 「……ボクの血縁者で、鷹城晶。ヒナを狙ったのは、恐らく晶の孫・鷹城望(たかじょうのぞむ)だろうね。ボクの婚約者を名乗る厚顔無恥な女」
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1392人が本棚に入れています
本棚に追加