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樹の中で黒幕の姿を突き止めることは、あまりにも容易かった。
言葉では語らなかった徹の表情からも、肯定の意を察することが出来た。
けれど、樹も父・総一郎も、鷹城の名において、同胞である彼女たちを糾弾することは、まだ出来なかった。
なぜなら、最大の証拠である人物・徹が、消えてしまったから。そう考えて、ひとつの可能性が浮かぶ。
徹は、晶と望を引き摺り出すべく、ヒナをスケープゴートにしたのではないか。
ヒナが己を刺したあのナイフは、日本製のものだった。
あれを事前に、徹がヒナへと渡していたのだとしたら。
ヒナが、男達に襲われそうな危機的状況に陥った時。
彼女がどういった行動を取るか計算し、その上で渡したのではないか。
自力で逃げることが出来ればそれでいい。けれど、あの場を独りで抜け出すことがどれほど困難か、バカでも分かる。
運を天に任せつつ、徹は思ったんじゃないか。
――――最悪、自害に持っていけたらいいと。
ヒナに何かあれば、警察が動き、確実に黒幕まで辿り着く。
総一郎が動くまでもなく、徹自身を道連れにして、晶達は簡単に潰れてしまうだろう。
それを狙ったのではないか。
ただ、総一郎のためだけに。ヒナを犠牲にして。
苦い思いが喉元をせり上げてくる。
敵が同胞であるが故に、例え証拠があっても、今は迂闊に動けない。
全てがまだ、時期尚早だった。
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