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「お前絡みのゴタゴタに巻き込まれて、ヒナは傷ついたんやな。やっぱりお前はあかん。二度とヒナには近付くな」
「……なに自分は真っ当みたいな言い方してんの? アンタの方がずっと後ろ暗そうなんだけど」
樹は振り返ってルカを見る。
ルカは目を瞠った。
凍り付いたように表情が消え失せた、樹の冷たい顔。
けれど、眸だけは焦げ付くような熱を宿していて。
それは子供ではあり得ない、老獪で狡猾な大人を匂わせる表情だった。
ふたりの視線が絡む。
射殺すほどの鋭さを伴った樹の双眸に、ルカは気圧されてしまう。
樹は瞼を閉ざし、小さく息を吐いた。
肩越しにヒナを振り返り、再びルカに視線を戻す。
そして、心を決めたような顔で、樹は切り出した。
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