狙われたヒナ

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 そんなヒナを見て、樹は嬉しそうな顔を崩さない。  じっと、ヒナの激情を観察している。  なぜ冷静でいられるのか。  あれほど好きと言ってくれたのに、なぜ笑っていられるのか。  ヒナは怒りで目の前が真っ赤に染まり、胸の奥が失意と落胆に黒く澱む。  彼にとって自分と引き離されることが、ヒナが思うよりも些細な、なんでもないことなのかとショックを受ける。  ヒナの瞳に浮かぶ責めるような色を見て、樹の顔から笑みが消えた。 「……誰が永遠に会えないみたいに言ったよ。最低3年。その間、ボクを待ってて。それまでに、めちゃくちゃに壊してくるから」  ――――3年。  樹が告げたタイムリミット。  涙の浮かぶ目を丸くした。  動きが止まったヒナの唇へ、樹は掠めるように口付けた。 「3年経ったら、ヒナを迎えに行く」  樹の吐息がヒナに触れる。 「その時、ヒナを抱くよ」  胸の鼓動が一気に高鳴った。 「もうイヤって言葉は聞いてやんないから」  そう言って、樹はニヤリと笑う。  ヒナの髪を指ですくように、樹は彼女の頭の後ろに手を差し込んで、引き寄せた。 「覚悟決めて待ってな」  その言葉は、驚きに目を見開くヒナの心へ深く刻むようにして、合わさった唇に吸い込まれてしまった。
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