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その時、マンションを出たところに止まる黒い高級車に目が止まった。
ヒナが横切ったら、後部座席の扉がバタンと開いた。
「わ」
ヒナは、出てきた美少女に目を奪われる。
腰まである艶やかな烏羽色の髪が風に揺れてふわりと舞う。
ぱっつりと切り揃えられた前髪は、筆で描いたような柳眉にかかり、理知的に光る切れ長で黒目がちな大きな瞳は、ひたとヒナを見据えている。
スッと通った鼻梁、品良く口角の上がった唇、綺麗な流線型を描く卵形の顔に収められたパーツ全てが完璧で。
全体の印象は、誰もが認める「知的」な美少女。
「今泉陽菜さんですね」
鈴を転がすような、という表現にピッタリな可愛らしい声。
ヒナは返事を返すのが遅れてしまった。
「貴女が、鷹城樹さんの想い人?」
「え?」
「表現が難しいわ。どう言ったらいいのかしら」
少女は小首を傾げて、何かを思い悩んでいるふうだった。
「徹さん、この方に間違いないのかしら」
運転席へ座る人物へと、少女は語りかける。
ドキッとした。
少女が口にした名前。
――――徹さん。
ヒナは目を見開いた。
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