セブ編~序章~

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ルカとの再会から2日ほど経った日の夕方。  昼前には学校から帰宅していたヒナは、制服姿のまま、ずっと自室にこもり夏休みの宿題に取り掛かっていた。  母は取引先へ絵画の買い付けでイタリアに発ってしまい、しばらくはまた一人だけだった。  明日から夏休みだというのになんだか淋しくて、どうしても気持ちが沈んでしまう。  ヒナは寂しさと疲れを紛らわせるように窓辺へ視線を流した。  帰宅した時には燦々と照りつけていた太陽が、今はもう大分傾いていて、窓から見える空には、キャンパスに絵の具をのせたみたいに、朱を流した夕焼け色から夜の色へのグラデーションが綺麗に描かれていた。  ぼんやりと窓辺に視線を向けながら、物音一つしない寂莫とした室内で重い溜息を吐く。  その時、突然電話が鳴り響いた。  驚きにビクッと背を撓らせ、息を詰まらせたナは、慌てて電話の子機を掴む。 「はっはい、もしもし、今泉ですっ」 『おう、オレオレー』  オレオレ詐欺のような物言いに、ヒナは一瞬きょとんとしたが、発音と声で、それがルカだと分かってホッと唇を綻ばせた。 「ルカちゃん? こんばんは!」 『おう。ヒナ、今ヒマ? 今からメシ食べに行かへん?』 「え? あ、はあ」 『今駅前やねん。すぐ迎え行くわ。ほななー』 「えっ、あ、ルカちゃ、」  用件だけ告げてさっさと電話を切ったルカに、ヒナはしばらく呆然としてしまう。  はっきりと了承した覚えはないのだが、ヒナの曖昧な返事を了承と取られてしまったようだった。  時計を見て、駅前だったら15分くらいで来ちゃうの!? と我に返る。  ヒナはアワアワと立ち上がり用意を始めた。
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