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ルカとの再会から2日ほど経った日の夕方。
昼前には学校から帰宅していたヒナは、制服姿のまま、ずっと自室にこもり夏休みの宿題に取り掛かっていた。
母は取引先へ絵画の買い付けでイタリアに発ってしまい、しばらくはまた一人だけだった。
明日から夏休みだというのになんだか淋しくて、どうしても気持ちが沈んでしまう。
ヒナは寂しさと疲れを紛らわせるように窓辺へ視線を流した。
帰宅した時には燦々と照りつけていた太陽が、今はもう大分傾いていて、窓から見える空には、キャンパスに絵の具をのせたみたいに、朱を流した夕焼け色から夜の色へのグラデーションが綺麗に描かれていた。
ぼんやりと窓辺に視線を向けながら、物音一つしない寂莫とした室内で重い溜息を吐く。
その時、突然電話が鳴り響いた。
驚きにビクッと背を撓らせ、息を詰まらせたナは、慌てて電話の子機を掴む。
「はっはい、もしもし、今泉ですっ」
『おう、オレオレー』
オレオレ詐欺のような物言いに、ヒナは一瞬きょとんとしたが、発音と声で、それがルカだと分かってホッと唇を綻ばせた。
「ルカちゃん? こんばんは!」
『おう。ヒナ、今ヒマ? 今からメシ食べに行かへん?』
「え? あ、はあ」
『今駅前やねん。すぐ迎え行くわ。ほななー』
「えっ、あ、ルカちゃ、」
用件だけ告げてさっさと電話を切ったルカに、ヒナはしばらく呆然としてしまう。
はっきりと了承した覚えはないのだが、ヒナの曖昧な返事を了承と取られてしまったようだった。
時計を見て、駅前だったら15分くらいで来ちゃうの!? と我に返る。
ヒナはアワアワと立ち上がり用意を始めた。
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