セブ編~序章~

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 それは、一本の電話から始まった。  リビングでボンヤリとテレビを見ていた時、突然電話が鳴り響く。  ビクッと飛び上がったヒナは、慌てて電話を取った。 「はいもしもし、今泉です」 『お、その声、ヒナか?』 「え、はい」 『オレオレ、高梨。声だけじゃわからんかなあ』  嬉しそうな声が耳に届く。ヒナは「あっ」と、声を上げた。 「高梨さん――――もしかして、ルカちゃん!? 私、覚えてます! 忘れてません!」 『ほんまか! 嬉しいなあ。お母さんから聞いてるで。ヒナ、絵ぇで賞取ったらしいな。写真でやけど見せてもろた。さすが啓太さんの娘さんや』 「あ、はい! ありがとうございます!」 『あ、そうや。オレ、今DIVAにおるんやけど。社長……お母さん、今そっちおる?』 「はい。ちょっと待って下さい!」  ヒナは大急ぎで母を呼びに行く。  母が経営する大阪の画廊・DIVAから掛かってきた電話で、相手は高梨瑠伽だと告げると、ヒナは母に受話器を渡した。  電話口で話す母にちらちらと落ち着きない視線を送りながら、昔よく遊んでくれた懐かしいお兄さんからの電話に、ヒナの胸がワクワクとさわいだ。
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