1391人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
それは、一本の電話から始まった。
リビングでボンヤリとテレビを見ていた時、突然電話が鳴り響く。
ビクッと飛び上がったヒナは、慌てて電話を取った。
「はいもしもし、今泉です」
『お、その声、ヒナか?』
「え、はい」
『オレオレ、高梨。声だけじゃわからんかなあ』
嬉しそうな声が耳に届く。ヒナは「あっ」と、声を上げた。
「高梨さん――――もしかして、ルカちゃん!? 私、覚えてます! 忘れてません!」
『ほんまか! 嬉しいなあ。お母さんから聞いてるで。ヒナ、絵ぇで賞取ったらしいな。写真でやけど見せてもろた。さすが啓太さんの娘さんや』
「あ、はい! ありがとうございます!」
『あ、そうや。オレ、今DIVAにおるんやけど。社長……お母さん、今そっちおる?』
「はい。ちょっと待って下さい!」
ヒナは大急ぎで母を呼びに行く。
母が経営する大阪の画廊・DIVAから掛かってきた電話で、相手は高梨瑠伽だと告げると、ヒナは母に受話器を渡した。
電話口で話す母にちらちらと落ち着きない視線を送りながら、昔よく遊んでくれた懐かしいお兄さんからの電話に、ヒナの胸がワクワクとさわいだ。
最初のコメントを投稿しよう!