セブ編~序章~

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 高梨瑠伽(たかなしるか)。  彼は、日本を代表する新進気鋭の若手近代画家のひとりだ。  ヒナが父親の次に憧れている人物、それが高梨瑠伽だった。  昔、父が生きていた頃、17になったばかりの瑠伽を家へ連れて来たことがある。  瑠伽の父親とヒナの父親は親友同士で、ヒナも小さな時から瑠伽親子と面識があった。  けれど、瑠伽が17になった年、彼の両親は突然の事故で亡くなってしまった。  幼い頃から、瑠伽には画家としての溢れるほどの才能があった。でも、両親を早くに亡くしたことにより、彼は画家になるという夢を諦めねばならないのかと、自暴自棄になっていた。そんな時、ヒナの父が援助を申し出たのだと、昔聞いたことがある。  ヒナの父の後ろ盾を得た瑠伽は、その後美大へ通い、無事卒業し、そして今、日本を代表する画家として世界中で活躍している。  ヒナは、父のような、瑠伽のような画家になりたいという夢を持っていた。
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