薬剤師物語

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俺は加えていた煙草を思いっきり窓の外に放り投げた! やることも無く、半分自暴自棄だった俺はオヤジの願いに乗ってみることにした。 それには先ず、ニコチンで麻痺した頭をすっきりさせなくてはならない。 残りのタバコも握りつぶしてゴミ箱に叩きつけると、喜びかけているオヤジに向かって釘を刺した。 「一度だけだからな!一度だけ大学受験してやる。それでダメならあきらめろよ!その先は俺の好きにやらせてもらうからな!」 オヤジは頭を下げているようだが、俺はどこかに閉まっておいた一年生の頃の教科書を探すのに忙しかった。 やるとなったらとことんやるのが俺の信条だ。 それにしても、自分の学力は十分、分かっている。高校一年生からやり直しだ! 大学なんて受かるかどうかわかんねぇ、とにかくやれるとこまでやってみる・・・ 俺はそう決めた。  ※ 高校の卒業式も終わり、俺はひさしぶりに哲也の墓参りに来た。 花を換え、墓石に柄杓で水を掛ける。 すると、後ろで俺を呼ぶ声がした。 「秀ちゃん」 振り返ると、哲也の母さんが立っていた。 「おばさん・・・」 「お参りに来てくれたんだね。ありがとう」 何か言おうとして何も言えないでいる俺に気をつかってか、おばさんは優しく話しかけてきてくれた。 「秀ちゃん、大学に受かったんだってね。良かったわね、おめでとう」 「ありがとうございます。性に合わないんだけど、大学に行ってくれって、オヤジに泣きつかれたもんで・・・」 「そう・・・いいお父さんね。哲也もきっと、秀ちゃんの大学に受かったことを喜んでるわよ」 「・・・」 言葉の出ない俺の顔を覗き込むようにおばさんが言ったことに俺は驚いた。
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