薬剤師物語

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「秀ちゃん、薬剤師になるんだね」 「えっ、薬剤師?!」 俺は、自分の受かった大学がどういう大学か詳しくは知らなかった。 とにかく自分の学力と受験科目に募集要項を照らし合わせて、受けられそうな大学を無作為に選んで、手当たり次第に受験していた。 そして、何とか一校だけ、ギリギリ受かったのがその大学だ。 薬学と書いてあったから、薬か何かの配合の勉強でもする大学だろうと思っていた。 そこで、化学に強くなって、特殊な燃料の配合とか勉強できたらバイクの整備に役立つと勝手に期待していた。 それがまさか、俺としてはあまり聞きなれない「薬剤師」とかいうものになる大学だったなんて・・・ 「そんな、薬剤師とかになる大学だったなんて、いま知ったよ」 と俺はおばさんに言った。 それを聞いたおばさんは「秀ちゃんらしい」と、思いっきり笑ったが、こっちとしてはそれどころじゃない。大学を卒業したらバイクのメーカーかディーラーにでも勤めようと思っていただけに、そんなあまり聞きなれない「薬剤師」なんてものになるなんて全くの予定外だ。 やっぱり大学に行くのをやめて、バイク整備工の勉強をしようと考えた時、おばさんは哲也の墓に手を合わせて哲也に話しかけた。 「秀ちゃん、薬剤師になる大学に受かったんだよ。秀ちゃん、きっとあなたの仇を取ってくれるわよ」 そうだった、哲也は事故ではなく、薬の副作用で死んだのだった。 まいったな・・・。 心の中でそう呟くと、「とことんやるしかねぇ」と覚悟を決めた俺は、ゆっくりとやめていた煙草に火を付けた。 大学の六年間なんてあっという間だ。 実習とテストに追われて、ろくにバイトする暇もねぇ。 それなりには遊んだが、一番思い出に残ったのは、夏休みに独りで北海道をバイクで一周したことだ。 道路は真っすぐで、空気は冷たくてうまいし、広がる緑の景色は最高だ! それから後は国家試験の勉強に追われ、学生生活のことはあまりおぼえてはいない。 そうして、国家試験に合格した俺は、晴れて薬剤師となり、調剤薬局に就職した。 調剤薬局とは文字通り、調剤を専門とする薬局で、病院から発行された患者の持ってくる処方箋を元に薬を揃えたり調合したりする。 それを患者に渡すまでが業務となる。 そんな薬局に勤めることになった俺だが、すぐに辞めた。 それには、こんなことがあったからだ・・・
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