第1夜

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「左近寺(さこんじ)先生!こんにちは、お邪魔します!!」 あたしは靴を脱ぐと、勝手知ったる他人の家、『研究室』と書かれた部屋のドアを開けた。 「亜紗陽君か。…耳がキンキンするから、あんまり大声を出さないでくれたまえ。」 あ、そうだった。 先生は煩(うるさ)いのが嫌いだもんね。 毎回、やってしまうんだよね、つい。 「すみません。」 「学習能力ゼロだね、君は。」 …そして、また同じ台詞(せりふ)を言われてしまうんだ。 「はあ…その通りです。」 「まあ、かけたまえ。お茶でも飲むかい?」 基本的には優しい人だ。 四季神に比べればずっとましな人だわ。 近所では変わり者で通ってるみたいだけどね。 頭のいい人って、大抵そんなものよ、これも祖母の言葉。 左近寺先生は多分、まだ若いに違いないが、身なりを気にしないというか無精(ぶしょう)というか…。 良く言えば、研究一筋で寝食を忘れる事もあるんだとか。 でも残念な事に、ただの変人にしか見えないのよね。
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