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「ビール飲みてぇ!」
水商売の黒服という仕事をしてみようと思った。動機は至って単純で安易なもの。俺の彼女のマリは小さなキャバクラで今現在働いているのだが、そのマリ曰く、
「うちの店長っていっつもビール飲みながら仕事してんだよぉ。どう思う?」
と、何気ない会話の中でふと漏らした。俺は酒が、特にビールが何より好きで体調さえ悪くなければ365日毎日ビールを流し込む生活をしている。
なけなしの金を飲み代に回す生活。車やファッションや旅行にお金を使うより仲間と飲むのが好きだった。
決して中毒的なものではなく、妙な酒癖もないし記憶が飛ぶほど飲むわけでもない。とにかくビールが大好きなのだ!
そんな俺にとって彼女の一言はかなり衝撃的であった。
(仕事しながらビール飲んでいいの?しかも毎日!?)
と…。
仕事の内容や将来性なんて特に考えず、俺は水商売ってものをやってみようと思った。本当に安易な選択ではあったがこの選択はこの先の俺の人生に水商売のおもしろさや喜び、目標と地位、成功を与えてくれることになる。そして、嘘や裏切り、孤独、絶望、敗北をも同時に教えてくれることになる。
俺の人生を変えた…いや、変えてくれた…いや、変えてしまった一言。
「うちの店長っていっつもビール飲みながら仕事してんだよぉ。」
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