初水商売

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初水商売

俺は24歳。先週昼の仕事を辞めた。別に夜の仕事がしたくて辞めた訳じゃなく、理由は夜とは関係ない。4年間働いた会社で、仕事もそれなりに充実していたし仲間と呼べる奴も何人もいた。人間関係や仕事内容は決して悪くなかった。ただ… (辞めたくなった)のだ。 「なんで?」 と聞かれれば、ちゃんとした答えがあるわけじゃなく、正直自分でもよくわからないとしか言えない…。 何でもいいから一から新たな何かをやってみたいと決心し、その一心で会社を辞めた。そんな時にあの「一言」を聞いてしまったという訳だ。周りの連中には 「お前いい加減だなぁ」 「そんなんでいいの?」 など散々言われもしたが、自分的にはむしろ自分の気持ちに素直に行動できた事を誇らしげにさえ感じている。とにかく試してみたいのだ!自分というものを! そして今、無職となった俺は履歴書片手にネオン街にやって来た。特に夜の世界に知り合いもいない俺は求人雑誌でなんとなく一つのお店を選んだ。系列店舗を6店舗ほど持つ会社らしく、既に電話で面接希望の連絡は済ませてある。少しの緊張と未知なる世界への期待を胸に、俺は店のドアを開けた! 「あの~、昨日電話した者ですけど…」 お店はまだオープン前で黒服らしき人が一人だけカウンターに座っていた。 「ん?あぁ…電話のね…、とりあえずちょっと待ってて」 と無愛想に、少し面倒くさそうに答え、テーブルまで案内してくれた。想像してたより割りと小さめなお店で、高級クラブというよりは普通のキャバクラ。しばらくして別の男が現れる。見た目40歳くらいの、一見して黒服と呼ぶには程遠い感じの身なりと風貌のおっさん。そいつが目の前にドガっと座り、 「じゃあまずは給料の話から始めよ」 と、特にこちらに質問もせずに話し出した。ほんの10分程で一通りの説明が終わり、 「まず最初の3か月は給料安いよ?」 と締めくくった。 「経験は?」 「無いっす。初めてです」 「ふーん、まぁ経験は問わないから頑張って。採用だ。早速今日からな!」 「今日?…今日はちょっと用事があって」 「そうか…じゃあ明日から頼むよ」 「明日…ですか。明日もちと用事が…」 本当はただ友達と遊ぶ予定があっただけではあるのだが…。 「君さぁ…働きたいんだろ?ダメなの?」 「はい!本当すいません」 「…わかった。帰っていいよ…」 「無理言ってすいません、あさってからしっかり頑張りますので!」
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