【三】狡い恋

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「社長と凛子ちゃんのことは、仕事に持ち込まないこと」 早苗さんの忠告通り、私達はプライベートなことには触れないこととし、翌日バイトに来た凛子ちゃんにも普通に接する。 銀座店に勤務する者は、みんな何かしら秘密を抱えている。 何もないのは、木葉君だけだな。木葉君は天性のものなのか、花との相性はよくセンスもいい。 店頭での簡単なラッピングはマスターし、僅か一週間で花の名前も大体わかるようになった。 ―日曜日― 「椿さん、この薔薇は?」 「これは、ザ フェアリー。横張り性で四季咲き。これはボウベルズ。同じ四季咲きだけどこちらは半つる性なの。木葉君は勉強家だね」 「お客様には正社員もアルバイトも関係ないでしょう。聞かれて知りませんでは、お店の心証を害する」 「木葉君が店頭にいるだけで、心証アップだよ」
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