【一】秘密の恋

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最後に立ち寄った店 ―紫蝶― 小さなバーだ。 「早苗さん、実は店の女の子が結婚するの。急で悪いんだけど、七~八千円くらいで花束お願い出来るかな。その子ピンクが好きなんだよね」 「いいですよ。華ちゃん、ピンクの薔薇で花束作ってくれる。カトレアやネリネも合わせて」 「はい。わかりました」 こんな注文は日常茶飯事。 早苗さんが店内のフラワーアレンジをしている間に、私は花束を作る。 ピンクの薔薇やカトレアやネリネ、霞みそうやドラセナで花束を作り、二色のペーパーでラッピングしリボンで仕上げた。 「華ちゃんもそろそろじゃない?結婚しないの?」 「私は相手がいませんから。募集中です」 私よりも、まず早苗さんでしょう。ママも早苗さんには『結婚』の二文字は禁句だとわかってるから、振りもしない。 早苗さんはもう『結婚』は諦めたのかな。そこはグレーゾーンだ。
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