【一】秘密の恋

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外回りを終え、店に戻る。 店内は御姉様方で賑わっている。木葉君に群がっているのだ。 女は花で、男は甘い蜜を吸う蜜蜂だと思っていたが、どうやら、男も花となり、女は甘い蜜を吸う蝶になるのだと、改めて実感する。 「ただいま帰りました。店長凄いですね」 「だよね、木葉君と凛子ちゃんがいれば、この店も安泰だな」 「それ、どういう意味ですか?私と華ちゃんは用無しだと?」 「とんでもない。フラワーアレンジの巨匠である早苗さんと、ベテランの華ちゃんあっての銀座店ですよ」 店長は早苗さんの機嫌を損ねないように、早苗さんを一生懸命ヨイショしている。 温厚で優しい性格の店長。 結婚していなければ、私の理想の男性像に最も近い存在。 不倫はモラルに反している。だから秘かに淡い恋心を抱いているが、それは何かを期待しているわけでもなく、単なる憧れ。 店長の言葉や笑顔に、少しドキッとするくらい、神様は許してくれるかも知れない。
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