【四】危険な恋

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「私が経営陣に?」 「そうだ。辞令は通常ならば一週間以内に異動先に赴任することが習わしだが、半年間の猶予を与えたのは、スクールの準備期間だからではない。半年で不出来な正社員を、一人前にすることも重要な仕事だ。小林さんが異動になることで、この銀座店を潰してはならない。いいな」 不出来な正社員… 私のことだ。 「以上、檀、スクール開校までのスケジュールと役員会のスケジュールを小林さんに」 「はい、社長」 秘書はフラワーアレンジスクールと印刷された黄色い封筒を早苗さんに差し出した。 「役員昇進並びに今秋スクール開校が正式に決定し、おめでとうございます。小林さんは本日付で社員ではなく役員に昇格致しました。こちらはスクール開校に関しての重要書類となります。詳細や打ち合わせは後日企画会議を行います。役員会のスケジュールはこちらになります」 「それはどうも」 早苗さんは封筒を受け取り、社長に視線を向けた。 「あなたにお礼を言うべきかしら?ファミリーでもない私を役員にするなんて、異例にもほどがある。一社員の私を簡単に役員にしてもいいの?」 「君の実力を評価したまでだ。失礼するよ」
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