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『中学二年生・四月』
僕には最近、何故かずっとつきまとってくるクラスメイトが、いる。
「潤ちゃーん! さみしかったぁー!」
放課後の喧騒の中、人目もはばからずに抱き着いてきた、この長身イケメンではない。この子は桐谷陽斗君、ただの幼馴染だ。中一のみならず、中二になっても僕とクラスが離れてしまったという事で、ご機嫌斜めな彼は下校の度このざまである。
問題なのは、僕の右。
「おう陽斗、熱烈だな」
爽やかに言い放った、この子である。星野涼介君。最近やっと、名前を覚えた。
「あれ、今日涼介も一緒?」
「うん、帰る方向、一緒みたいで」
「途中までだけどな。てか、今年はクラス離れちゃったな、陽斗」
いつの間にか陽君と星野君の間に、当然のようにサンドされる。陽君は幼稚園の時から僕にべったりだし、まあ仕方がないのはわかる。だが、星野君は、解せない。解せぬ。こんなに男子ばっかりに付きまとわれるなら、共学を選べばよかった!
元男子校と女子校出身の両親に、「共学よりも絶対に楽しいから」と言う理由でここ、南東学院を受験して、晴れて合格したのは良いが。右を見ても左を見ても、男子男子男子。男子の波、男子の渦。男子の海。しかもなんと、ここは中高六年間エスカレーター式の進学校。「高校受験がなくてよかったじゃない」なんて、母さんは笑っていたが。
別に彼女が欲しいってわけじゃないんだけれど、なんだかむなしい。
「ん、半分あげる、菊池君」
「……ありがとう」
買い食いのアイスを同級生男子から半分こされる、僕。むなしい。
「あー! なにそれ、ずるーい!」
コンビニからポテチの袋とパックジュースをもって出てきた陽君が、目ざとくその場面を発見した。いちごミルクにのりしお味か……口の中、とんでもないことになりそう。
「陽斗はポテチ買ったから、いーじゃん」
「そっちじゃなくて、涼介の方! 潤ちゃんと半分こうらやましーよー」
「何に嫉妬してんの、陽君は……ほら、行こう」
多分、この半分こが陽君から貰ったものだったら、僕も何の疑問もなくうけとって美味しくいただいていたのだろう。おやつの半分こ、昔からよくしてたし。でも、相手はこの四月、そうつい一週間か二週間前に出会ったばかりの星野君だ。そんなによく知りもしない相手に分けてもらうって……なんだか腑に落ちない。いただくけど。
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