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「陽君、のりしおにいちごミルクって、どうなの?」
「え、どっちもおいしーよ?」
「いや、食べ合わせの問題、だよな?」
「……なら食べてみりゃいーじゃん」
はい、と言って陽君がずい、と僕にのりしおの袋とストローがつきささったピンク色のパックを、差し出してくる。
「かわりに、これちょっとちょーだい」
そして、右手に持っていた溶けかけのアイスに、器用にぱくりとかぶりついた。
「僕のアイス!」
「あー! 陽斗ドロボー」
「ドロボーじゃないよ、ブツブツ交換だよー」
「……陽君、物々交換って漢字でどう書くか、知らないでしょ」
「まじかよ陽斗」
「いいんだ馬鹿でも。俺ってイケメンだから、さあ?」
ふ、とキメ角度、そして最高のドヤ顔。
「うぜー……」
「星野君ナイスな反応ありがとうございます」
「え、何それ! 潤ちゃん俺のことイケメンって思うでしょ!?」
「うん、顔はかっこいいよね、顔は」
「ほらー!」
「いや、嬉しそうだけど、陽斗、馬鹿にされてるからな?」
どういうことー! と叫ぶ陽くんにむかい、歯を見せて笑う星野君を、ちらと見る。なんだ、この二人って、仲いいんだ。なんか下の名前で呼び合ってるし、元々クラス一緒だったもんな。
バス停に着く頃にはアイスもポテチもなくなっていて、陽君のみがパックを片手にバスに乗り込んだ。二人席が前後で二つ空いていたから、そこへ座る。もちろん、僕の隣は陽君だ。僕たちの前に一人で座った星野君はくるりと後ろを向き、三人でまた十分ほど馬鹿な話を続けた。
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