中学二年生・四月

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「陽君、のりしおにいちごミルクって、どうなの?」 「え、どっちもおいしーよ?」 「いや、食べ合わせの問題、だよな?」 「……なら食べてみりゃいーじゃん」  はい、と言って陽君がずい、と僕にのりしおの袋とストローがつきささったピンク色のパックを、差し出してくる。 「かわりに、これちょっとちょーだい」  そして、右手に持っていた溶けかけのアイスに、器用にぱくりとかぶりついた。 「僕のアイス!」 「あー! 陽斗ドロボー」 「ドロボーじゃないよ、ブツブツ交換だよー」 「……陽君、物々交換って漢字でどう書くか、知らないでしょ」 「まじかよ陽斗」 「いいんだ馬鹿でも。俺ってイケメンだから、さあ?」  ふ、とキメ角度、そして最高のドヤ顔。 「うぜー……」 「星野君ナイスな反応ありがとうございます」 「え、何それ! 潤ちゃん俺のことイケメンって思うでしょ!?」 「うん、顔はかっこいいよね、顔は」 「ほらー!」 「いや、嬉しそうだけど、陽斗、馬鹿にされてるからな?」  どういうことー! と叫ぶ陽くんにむかい、歯を見せて笑う星野君を、ちらと見る。なんだ、この二人って、仲いいんだ。なんか下の名前で呼び合ってるし、元々クラス一緒だったもんな。  バス停に着く頃にはアイスもポテチもなくなっていて、陽君のみがパックを片手にバスに乗り込んだ。二人席が前後で二つ空いていたから、そこへ座る。もちろん、僕の隣は陽君だ。僕たちの前に一人で座った星野君はくるりと後ろを向き、三人でまた十分ほど馬鹿な話を続けた。
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