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(・・・あの人はなんで的確に僕のほうを見てる!)
その生徒の名は八代夢幻。
そして視線の先には、二人の生徒が立っていた。
見ているのだ。蒼忌翠月が。
「見つけた」
と・・・
(ありえない!)
そうありえるはずがない。
なぜなら夢幻のいる位置は普通の人の視力で見える範囲ではないからだ。
夢幻の視力は5キロ先も見える。どこかの砂漠の遊牧民よりも視力が良く、夢幻の能力[視覚改変]を扱う際の強みでもあった。
(それに・・・)
と。
(僕の姿が見えてるはずがない)
見えないのである。
[視覚改変]により自分の姿はあの二人には見えないようにしているはずだから。
そして翠月の口が動いた。
「[かくれんぼ]を始めようか」
その正体不明の悪寒に背筋が凍った瞬間。
窓ガラスを突き破り一人の生徒が眼前に飛び込んできていた。
「なっ!」
その瞬間、[視覚改変]の効果が切れたのか夢幻の姿が見えるようになった。
「やっぱり翠月の言った通りの対価だったんだ」
一人の生徒、すなわち詩織がひとりで納得していると。
「今、何を。何をした!。ありえない、君たちのいた場所から少なくとも2キロは離れてるんだぞ。それにどうやってこの位置を!」
夢幻が驚くのも無理はない。
なぜなら詩織は夢幻の言ったとおり、約2キロ離れている位置からまばたきするような速度で窓ガラスに突っ込んできたのだから。
「どうせもう私達が勝つんだからいいよね。私の能力は[速度改変]、2キロ位なら一瞬で移動できるよ」
そしてその割れた窓ガラスからもう一人の生徒、翠月が飛び込んできた。
「ここまで移動したいとは言ったが、普通投げるかよ。それにお前のほうがはやく着いてるし」
そして、翠月は夢幻のほうを向いて言った。
「よう、はじめましてだよな。試験会場から逃げた臆病者さん」
その言葉に夢幻は目を見開いた。
そして続けて。
「対価は呼吸。なかなか長い時間できてるってことは息を止める訓練でもしたのか?」
翠月は笑って確定している答えを問う。
「どうして・・・」
「お前の疑問の答えを教えてやる」
そして一つずつ指を立てながら。
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