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「暇ってある意味拷問だよな」
これから生徒になる一人の青年がそうつぶやいた。
「入学式にそんなこと言わないの」
その隣で歩いている女の子は半ばあきれながらその言葉をたしなめる。
[空零能力機構学院]
全世界の約2割の異能の生徒が通うただ死ぬために異能の訓練をおこなう人類に勝利をもたらすことのない意味のない場所。
翠月にとって学院は死にに行くための訓練を受ける。
そんな場所である。
なぜならここに通う生徒で卒業できるのはおよそ一割弱しかいないから。
その理由は単純だ。
入学しておよそ半年で訓練を受けその後様々な戦地に駆り出され、
そして・・・
一年目で入学した約三分の二は[死ぬ]からである。
生き残り戦果をあげ学年があがったとしてもまた違う場所に送られる。
つまり卒業するのに最低でも三回は生き延びなければならないのだ。
さらにそれは入学してから知らされるためにげることもできないのである。
「異能に悩み社会に受け入れられないやつらが異能を学ぶために希望を持ち入学してもすぐに逃げられない地獄がまってる・・・てか」
普通は入学するまで知らないはずの情報を持ってなを。
翠月は自分の目的を果たすために。
詩織はそんな翠月を守り共に生きるために。
四月一日
二人はこれからを紡ぎ始める。
「これより空零能力機構学院入学式をとりおこなう」
入学式
誰もが希望を持ち新しいこれからを思い描く行事である。
この学院以外は。
「あいつが学院長にして人類最強の異能者、夜桜月影か」
ポツリと翠月が口にした瞬間であった。
「っ!!」
見たのだ。
この入学者五十三名の中の翠月を笑いながら的確に目を覗き込まれていた。
気がつけばいつの間にか入学式は終わっており講堂には詩織と翠月そして数人の教師、それらと話している月影がいるだけだった。
「どうしたの?」
詩織は翠月の顔を覗き込み心配そうにしている。
「あの学院長、ほんとに人間かよ」
「なんかあったの?」
「なぁ、詩織。人間どこまで行けばあんな眼ができるんだろうな」
「私には難しくてわからない。でも翠月ならわかるんじゃないかな」
そして月影のほうを見るとそこには月影の姿はなかった。
そのかわり。
「教室は戻らんのか?」
翠月達の真後ろからそんな声が聞こえてきた。
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