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「さてと、あと二人も集めるか。目星もつけてあることだし」
そう言って翠月は唐突に立ち上がった。
「目星って・・・。誰を誘う気だい?」
「夜継の二人だ。序列試験のときに目をつけといた。誰かのせいでなかなかたどり着けなかったんだがなぁ」
「はは・・・。ごめん・・・」
「まぁ、もちろんお前にも協力してもらうぞ」
「え・・・。い、いや・・・夜継を相手に僕が勝てるわけない・・・」
「それは俺のほうだ。詩織ならまだしも俺は夜継には勝てん」
今まで黙っていた詩織が疑問を口にする。
「夜継ってそんなに強いの?」
「ほんと、なにも知らないよな」
翠月が半ば呆れながら説明を始めた。
「[夜継]っていうのは、[暗殺]に長けた家柄だ。たとえ能力がなくても夜継の暗殺体術は異能者をも殺すと言われている。・・・そして、[夜継]の現頭首は・・・[人類最強種]の一人だ」
「へー・・・。暗殺かぁ。・・・どうせ弱いに決まってるよ・・・」
「・・・・・・・・・そう・・だな・・・」
詩織の能力[速度改変]。
単純な能力ではあるが、[速度]という概念そのものを変えることが出来る力。
「・・・・・」
翠月は時々考える。
詩織の目に、世界はどう映っているのだろうか、と・・・。
全てのものが遅く、いや、全てが止まって見えてるのではないのだろうか。
詩織には誰も追いつくことは出来ないだろう。
物理的に、だけではなく思考も感情も、詩織を理解すること、同じ場所に立てるものは・・・どこにもいないだろう。
絶対に追いつけない。
そんな存在が目の前に現れれば人間はどんな反応をするのだろうか。
そんなもの決まっている。
絶対的な差は人の心を簡単に砕く。
故に、[諦める]。
追いかけるのも馬鹿らしくなり最後には例外なく諦めるのだ。
そして皆は言う。
「化物」
と・・・。
その言葉は瞬く間に詩織を孤独に追い込み、心を蝕んでいく。
詩織は誰もいない場所で一人で泣いていた。
そして・・・、詩織は確定してしまったのだ。
「誰も、私には・・・・・・・・・・」
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