勝てない、負けない ~The first lie~

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「翠月!、翠月!」 「・・・うぉ!」 「どうしたの?。大丈夫?」 いつの間にか詩織の顔が目の前にあった。 「問題ない。少し考え事をしていただけだ」 「そう、それならいいんだけど」 「で、結局その二人をどう倒すんだい?。話し合いで仲間になってくれるほど甘くはないと思うよ」 「そんなの決まってるだろ。夜継とか名の知れた家柄の連中は馬鹿みたいにプライドが高い。だからまぁ、相手に能力を使わないで一発殴れば終わりだ」 「そんなこと・・・夜継相手に出来るわけがない」 「お前は、だろ」 その言葉に夢幻は言い返す。 「暗殺に長け、能力を使うような相手に能力使わないで勝つなんて不可能だ!」 「勝手に決めつけんじゃねぇよ。確かに普通に戦えば不可能だろうな。この世に不可能なんて数え切れんほどあるさ。だがな[不可能]は確実じゃない。知恵と判断力、そして少しのイレギュラーがあれば簡単に覆る。・・・信用できないなら見ていろ。[人間]の戦い方を見せてやる。いくぞ詩織」 そう言って翠月は生徒会室から出て行った。 「ねぇ。ほんとに勝てないと思う?」 そんな詩織の質問に夢幻は答える。 「・・・勝てるわけないよ」 「私もね、そう思う」 「え?」 詩織からでた意外な言葉に驚く。 「だって[人]なんて私が投げた石ころ一つで簡単に死んじゃうんだよ。翠月も能力が無ければただの[人]。夢幻だってそうだよ。殺そうと思えばいつでも殺せる」 その言葉に背筋が凍りつく。 「翠月だってたぶん思ってるよ。・・・なんで異能なんてあるんだろ」 「それは・・・。他種族と戦うためなんじゃ・・・」 「じゃあ、なんで戦う力を持ってるのに勝てないの?」 「そ、それは・・・」 分かるわけがない。 戦う理由なら考えたことはある。 でも、勝てない理由なんて考えたことは無い。 なぜなら勝てないのがあたりまえになってしまっているから。
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