勝てない、負けない ~The first lie~

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「翠月は言ってたよ。[人]は勝てないって、でも負けることもないって」 「それはどういう意味?」 「[人]は模倣し学ぶ生き物だって言ってた。他種族を模倣し学ぶことが出来るはずって。相手がおこなったことを真似るって、どれだけ正確にやってもそれ以上にはなりえない。でも正確にやればそれ以下になることも無い。だから勝てないし負けない」 「でも、それだけじゃ・・・」 「だめだよね、勝たないと。だから翠月は絶対的な知恵と判断力を持ってる。模倣するだけじゃだめなら模倣し応用するって」 夢幻はいつの間にか聞き入っていた。 「人が負けるのは能力を持ち、知恵をつけることを忘れているから。翠月は[不可能]を知ってる。普通ならみんなそこで諦めるのに、諦めたって誰も責めないのに・・・。翠月は[不可能]を鼻で笑って覆す。皆は天才だって言ってたけどそれは違う。翠月は誰よりも努力して、諦めないで[不可能]と戦ってる。そして・・・誰よりも[不可能]を知ってる」 「・・・・」 「あ・・・・。ごめんね。長話しちゃって、さて、と。じゃ、行ってくるね」 そう言って詩織も生徒会室から出て行った。 「・・・・・僕も、諦めなければ勝てるのかな・・・・」 二人が出て行った場所を見て静かにそう呟いた。
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