勝てない、負けない ~The first lie~

18/20
前へ
/45ページ
次へ
「兄さん、誰かここに来る」 女生徒がつぶやく。 「誰か、ねぇ。誰が来たところで気づかぬうちに死ぬから関係ない。いつも通り・・・」 その青年の足元には血まみれの教師が三人ほど倒れていた。 「殺るぞ」 「・・・任せて」 その二人の生徒は[夜継]の名を持ち、学院の教師すら簡単に殺してしまう異能者。 そして、始まる。 「向かってくる奴は教師だけかと思ったんだがな」 「あなたは何秒生きていられるの?」 その問いに答えるのは・・・。 「さぁな、少なくともお前らごときには負けねぇよ」 そして、不敵に笑う。 「殺すしか能がない臆病者の[暗殺者]ども、手加減してやるから無い脳みそフル回転させて俺を殺してみろ」 蒼忌翠月。 「・・・兄さん、もう殺していい?」 「あぁ、いいぞ。反応する間も無く殺してやれ」 その言葉を聴いても翠月の表情は変わらない。 「さぁ、[おにごっこ]をはじめようか」 女生徒は数回地面の感触を確かめるように足を鳴らし。 一瞬。 それは、女生徒に翠月が短刀で貫かれるまでの時間。 「・・なる・・・ほど・・な・・・」 貫かれたのは、右のわき腹。 だが、驚いたのは貫かれた翠月ではなく、貫いたはずの女生徒だった。 「!。どうやって・・逸ら・・した・・・の?」 「おいおい・・・暗殺者が一撃急所外した程度で・・動揺してんじゃねぇよ」 そう言いながら、女生徒の手首を掴む。 「・・・今の速さが・・見えるはずが無い!」 翠月の手を振りほどこうともがきながら叫ぶ。 「あぁ・・・。今の速度のことか・・・。まぁ、確かに速いが・・たかが[音速]だろ?」 そこで女生徒が動揺する。 「ちなみに・・能力は[音響改変]って言ったところか?」 女生徒はとうとう動揺を隠せなくなった。 「な!・・・」 「なぜ知ってる。って顔だな。こんなもん一撃食らえばすぐに分かるだろ・・・」 そう言いながら体から短刀を少しずつ引き抜いていく。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加