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翠月と月影以外は。
「いない、詩織が覚えてないなら試験にはいなかった。・・・確実に」
そう、なぜならば詩織は一度見たものを忘れない。
夢幻の異能を看破した驚異的な記憶力は詩織の強みの一つでもある。
「なぁ、月影」
そう言いながら月影を睨みつけながら続ける。
「序列選定試験なんてほんとはただの形だけのイベントなんじゃないのか?」
「なぜ、そう思うのかの」
そんな翠月を笑いながら見返す。
「誰だって思うさ、おかしな点ならいくつもあるだろ。今の話の[アルケミスト]のことも、絵札の奴らだってどうやって測定した?。日常生活に異常をきたすものが絵札になるらしいが、ただの戦闘のみ、たった一回だけで測定できるわけ無いだろ。そして最後に一つ・・・」
「なぜ偽者を使ったか、かの」
翠月の言葉が出る前に月影が先を言った。
「偽者?。なにが?」
翠月は詩織の問いに答え始める。
「一言で言ってしまえば、[渡貫剛天]だ。序列選定試験で戦ったあの男は[偽者]なんだよ」
「渡貫じゃないってこと?」
「いや、渡貫で合っている。違うのは[戦闘スタイル]だ」
「戦闘スタイル?」
「渡貫家頭首[渡貫剛天]は槍術において敵う者などほとんどいないだろう。だがな、奴はどんな相手にも[先手]で動くことで有名なのさ。故に[かかってくるがいい]なんて言葉を言うわけがない」
「ほう、なかなか詳しいの」
「で・・・。剛天をどこにやった?」
その声は周りの空気を殺すようなものだった。
「さぁ・・・、どこに行ったのかの。たとえ知ってたとしてもおぬしがいける場所にはおらぬよ。無駄話が過ぎたようじゃの、ではそろそろ送るとするかの」
そう言いながら部屋のカーテンを閉め、電気を消す。
「おぬしらが生きて帰ってくるのを楽しみにしておるよ。願わくば、[真理]を間違えぬよう祈っておるよ」
そこで意識は途切れた。
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