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[女湯]
「はぁ~、いいお湯ねぇ~」
「・・・・・」
「どうしたの?。温泉嫌いだった?」
「いえ、そういうわけではないのですが・・・」
不安と心配が入り混じった声で現状を確認する。
「なぜ、敵地で温泉に入っているのでしょうか・・・・」
そうである、今五人がいるのは敵地にある人の世界とは比べ物にならないほどの巨大な温泉なのだ。
「それに・・・・、ほんとに気づかれていないんですか?」
「ここに来たときに翠月が言ってたこと覚えてる?」
「はい・・・、[相手が害を与えてくるまでこちらからは手を出すな]と」
「うん、そうだね。つまりは気づかれてても、そうでなくても相手が何もしてこなければ関係ないんだよ。だから今は気を張る必要はないよ」
そう言いながら音葉に微笑みかけた。
[男湯]
「お前の神経はどうなってるんだ・・」
「なんだ業。不満でもあるのか?」
「翠月そこは察してよ」
「なんで敵地のど真ん中で風呂に入らないとならんのだ」
「べつにいいだろ、俺も詩織も温泉にはあまり入ったことがないんだから」
「それに、姿、大丈夫なんだよね。翠月」
「問題ない」
「まぁ、ばれてないならいいんだが」
今は、五人全員翠月の異能である[虚偽創作]により姿を偽っているのである・・・・・が。
「なに言ってんだ業。もうとっくにばれてるぞ」
「あ?、じゃあなんで何もしてこないんだ?」
「何もしてこないということはそういうことなんだろ」
「そういうこと?」
「人に対してあまり敵意がないか、敵としてすら見ていないのかどっちかだろ」
「なんでばれてると分かったんだい?」
「まぁ、一応姿の偽装はしたと言え、力は偽装できんからな。ここのやつら[妖怪]どもにある[妖力]とやらが俺達にはないからな。そこそこ戦える奴にはもう気づかれてるだろうさ」
「妖力、ねぇ」
業がぽつりとつぶやいた。
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