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「・・・いえ、今気づいたのですがおそらく無視ではありません」
「ちがうのか?」
「私の[音響改変]で音を収束して大音量で翠月さんに放ってみたのですが、何も反応がありませんので」
ちなみにこの会話も音葉が[音響改変]で他の者には聞こえなくしている。
「じゃあ、あれだね。聞いてないのではなくて、聞こえてないってことみたいかな」
今もなお、運転手は叫び続け、そして湯屋に到着した。
「着いたみたいだな」
「わかった、湯屋の代金出してあげるからそろそろ話をきいて~」
もう目に涙を浮かべているようにも見えるのはおそらく見間違えではないだろう。
「温泉にはいったあとでね」
詩織の言葉に涙は止まった。
「一応、偽装かけていくか」
「じゃ、またあとでね」
そうして翠月達は車から降り湯屋の中に姿を消した。
「・・・・・・あれ、これって・・・待ってないとだめなやつだよね・・・」
車からでて見送った運転手は膝から崩れ落ち、地面を濡らした。
「これ、哀れです」
助手席にいた少女はその姿を見て、そう小さくつぶやくのであった。
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