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すでに半分が終わっていた。
新入生がランダムに次々と呼ばれている。
必死に戦う者もいれば、戦う前から諦めている者もいた。
そして今、三十人目の模擬戦はというと・・・
一言で言って凄まじかった。
と言っても戦闘が凄いというよりは剛天が凄まじかった。
なぜなら戦闘が一方的すぎるのだ。
新入生相手でも容赦がない、というより手加減はしているが圧倒的すぎるというのが正しいのかもしれない。
ここまで戦ってきた生徒達は全員が一分持たずに崩れ落ちている。
それに引き換え剛天は息一つ乱していない。
「圧倒的だな」
「早く呼ばれないかな~」
詩織はというと模擬戦を見るのに飽きて後ろで柔軟やら体操やらをしていた。
だが、残りが十五人をきってきたところで剛天に及ばないまでもそれぞれの能力を生かし多少善戦している者が出てきていた。
「人数減ってきたしそろそろじゃないか?」
そして、とうとう詩織の番がきた。
「やっとまともに体動かせる」
剛天の前に歩いていき高らかに名乗った。
「水無月詩織、がんばって認識しないと死ぬかもよ」
そう笑いながら剛天に微笑みかける。
「自信があるようだな。いいだろうかかってくるがいい」
「じゃあ・・・いくよ」
一瞬の出来事だった。
おそらくその場にいるほとんどの者は、認識すら出来なかっただろう。
なぜなら、今、詩織はまばたきするようなわずかな時間の中で三回、剛天に攻撃したのだから。
「がはっ!」
さすがと言うべきかそんな音速に近いほどの速度の詩織の攻撃を二回まではさばいたのだ。
おそらくその後の三撃目はさばくのが間に合わず体に力を入れて堪えようとした。
だが、それでは足りなすぎたのだ。
いかに体を鍛えたのだとしても、音速でコンクリートをも砕くであろう詩織の拳を人の身で防ぐなど不可能なのだ。
「・・・なるほど、己の速度を上げる能力か」
そう言う剛天に対して。
「へ~、今ので骨砕けなかったんだ。なかなか丈夫な体してるけど、人類最強種でも今の攻撃防ぎきれないんだ。は~、期待はずれね」
そして、翠月の元まで歩み寄って。
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