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「ねぇ、翠月。あれぐらいなら私一人でも倒せたよ」
廊下を歩いていると詩織が小さな声でつぶやいた。
「だろうな。だが、剛天がたかが新入生と油断していたのもある。あいつが本気を出していたらこんな簡単に終わらなかっただろうさ」
「それならなおさら今回は私一人でも十分だったのに」
「こんなところで能力さらしてどうする。対価が知られればこれからの戦闘に影響してくるぞ」
[対価]
人が能力を行使するために発現する代償のこと。
「それなら翠月だってあの時ばれたら不正で退学になってたかもしれないよ」
その言葉をきいた翠月は足を止め言った。
「二人で試験を受けてはいけないなんてルールは提示されていない。故にあの時、俺が能力を使ったところで不正にはならない。わかったか?」
その言葉に詩織は。
「・・・屁理屈だ」
と、つぶやき。
「だが、事実だ」
と、返されてそれ以上言える言葉が無くなった。
[体育館]
「今年の生徒は優秀な者が多いですな」
そこには剛天と月影の姿があった。
「まぁ、そうじゃろうな。お主が負けるほどじゃったからのう」
「しかし、あの女生徒、すさまじい速度でしたな。」
と、試験を思い出して口にした。
「なんじゃ。お主はわからんかったのか。あの娘、能力を使用しとらんかったぞ」
その言葉に剛天は驚愕して。
「まさか、能力なしで音速を超えたと?」
「そんな馬鹿なことがあるわけなかろう。能力を使ったのは別の者じゃよ。」
「あの、一緒にいた生徒ですか。たしか・・・」
月影は楽しそうに笑って言う。
「蒼忌翠月。小細工をしおって。じゃが・・・なかなかに成長したのう。今年は退屈せんですみそうじゃ」
そう言って月影は姿を消した。
「人類最強・・・。未だになにを考えているのか、わかりかねるお人だ」
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