第1幕

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「ミカボンは色気があるし、モテてるけど、遊ぶ のにはいい。半年、楽しく明るく付き合うのには いい。  けど、二年三年と付き合いたい相手じゃないか な。まして、結婚したい相手じゃない」 「うーん、人気者でモテるんで、浮気されそうで 心配。嫉妬に苦しむ?」  などなど半ば、冗談紛れに言われ、一時、ショ ックを受けたのも過去の話。  気付いたって、性格なんて変わらない。 「ハーフみたいな顔で、きれい半分、可愛い半分、 明るいし、面白い。けど――」  けどが付いた。けどの方に重点がある。  調子に乗っていたら、アカンと思う時があって も、ついつい地は出てしまう。  お笑いの世界はそんなクラスや学校での人気者 がわんさか集まってた。  頭がよく計算でお笑いを弾き出す人、いじめら れ、虐げられ、見返してやろうってタイプも少数 ながらいた。  自分が大したことないのを思い知らされた。  逆に元引きこもりや冴えない人がオリジナリテ ィを発揮し、徐々に、または急に世間に認められ ていくのを目の当たりにした。 「なんで、あれが面白いの。わたしの方がましや ん」  売れない芸人仲間と、ひがんでは腐し合ったこ とも度々。  ももとふじのことが急に愛しくなり、ゆっくり 家に引き返す。  中途半端な才能を引っさげ、お笑いに精進する 傍ら、新しいバイト先で、今の旦那と出会った。  ゲーム制作のプログラマー。四月、同期入社だ ったが、向こうは正社員で一応、大卒。  飲み会の時、みんながわいわいとする中、端っ こでポツンと酒をちびちび飲んでいた。  ほっとけない性質のわたしは笑顔の大安売りみ たいに寄って行き、喧騒をよそに側にちょこんと 座る。  わたしが楽しくしてあげようと思った。会社で 何かと、犬ころのようにまとわりつく。  ある日、映画に誘われる。 「行きませんか?」 「あ、はい」  しおらしく頷いてしまう。狙っていたので内心、 やったー。  なのに、インドアカデミー賞の映画で途中、わ たしは寝てしまう。爆睡。 「なんて、女や」  とその後の居酒屋で文句を言われる。わたしは 笑うしかない。 「キャハハハ」  旦那もよく飲む。 「居酒屋は店先で手軽に酒を飲ませる酒屋さん」  な?んて、うんちくにも当時は感心。やっぱ、 大卒は違うー。 「お酒を飲む娘は好き」  と言われた。 「飲んでても飲んでなくても、未由さんは同じや なぁ」 「キャハハハ」
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